新しい青
全 て は こ こ か ら
青の物語
新しい青
青のはじまり
初夏を思わせる風が吹き、
新緑に包まれた由布岳が
まぶしいほどの輝きを放っていた。
父の誕生日を
ささやかに祝う季節。
ふと、呟いた父の言葉を思い出す。
「残りの人生を、ここ由布院で
共に暮らしたい」
そんな胸の内を聞きながら、
二世帯で暮らす家を
ぼんやりと思い描いていた。
その日、
翠緑の山並みを抜け、
別府へ車を走らせていた。
途中、
ふいに目に飛び込んできた一軒の家。
思わず息を呑んだ。
森の中に佇むような家。
表札もなく、
ひっそりとした佇まいに、
どこか惹かれた。
静かに扉を叩くと、
渡邉夫妻が迎え入れてくれた。
まるで、
ずっと前から知っていたかのような
懐かしさがあった。
そして、さらに驚いたのは、
思い描いていた
自然素材の家。
そこは偶然にも、
その家づくりを手がける
設計事務所だった。
家をつくる人と、
家を探していた私たち。
思いがけない出逢いが、
やがて次のご縁へとつながっていく。
そしてそれは、
これから始まる長い物語の
最初の一頁だった。
saiプラチナの縁
不思議な縁
偶然の出逢いがかたちとなり、
父と共に二世帯で暮らす家を建てた。
間もなく娘が生まれ、
父は還り、
歳月は季節のめぐりを繰り返していった。
理想と現実の狭間で、
まだ出逢えていない何かが、
心の奥にぽっかりと
空いたままだった。
現実も、どん底。
そんな頃、
saiプラチナとの
不思議な出逢いがあった。
直感的に、
運命を感じた。
それは、
自然にはからわれたような
出逢いだった。
不思議な出来事は、
その後もたくさん起きた。
娘が5才の時に話してくれた
あるエピソード。
それが10年後、
共時性として
物語とつながりはじめた。
そして――
時を重ねる中で、
ある一言が、
次の流れを運んできた。
「あなたはものづくりがあう」
奇才の一言だった。
その言葉に導かれるように、
わらび餅をつくる流れが生まれ、
それから
試行錯誤すること3年。
禧水・由布院わらび餅が誕生した。
やがて工房も手狭になり、
増築を考えていた矢先、
「我が家を買いたい」
という人が現れた。
渡邉夫妻に相談すると、
「私達に似合う家が別府にある」
まるで待っていたかのようなタイミングで、
一軒の家を案内してくれた。
そこは、
私達の好みを熟知しているかのように、
大好きな青色を基調とした
洋館の別荘――
画家・西岡邸だった。
青の家
まるで異国のような世界観を放ち、
扉を開くと、
奥行きのある空間が広がっていた。
築50年。
中庭のある重厚な佇まいに、
思わず歓声をあげた。
画家・西岡氏は、
世界を旅する中で、
地球のマグマが湧き上がる地、
別府に惹かれ、
この地を拠点に、
アトリエで様々な作品を創作していた。
画集も出版し、
作品の数々は
ご縁のある方々へ寄贈していた。
人望もあり、
仲間が集っていた家。
リビングの暖炉周りには
青のデザイン。
西洋で縁起物とされる
葡萄文様のタイル。
中庭テラスには
葡萄柄のガーデンセット。
そして、
彼の作品も譲り受けた。
不思議なご縁から、自然に巡り合い、
また次のご縁へと
バトンが手渡されていく。
そんな流れの中で、
青の家との物語が始まった。
10年の歳月を重ね、
今、ようやく
ここに在る。
時を重ねたからこそ、
ずっとあった種に気づき、
その深さが沁みてくる。
東京から26才で大分へ。
始まりの一滴は、
既にあの時から
動きはじめていた。
55年の歩みを振り返ると、
葛藤しながらも、
そこに良いも悪いもなく、
まるで、すでに決まっていたかのように、
私の映画は上映されてきた。
そして、またここから、
これまでとは違う流れが、
静かに動きはじめた。
新たな流れ
新たな流れ
ここから、
saiとの縁が生まれた16年前へ。
早くから世の中に違和感を感じ、
外向きの正解に合わせる息苦しさ。
人生の方向性もわからず、
不安を抱えたまま、
本音を誤魔化しながら、
迷子のピエロ状態だった。
そんな私の前に、
saiとの縁が現れた。
待ち侘びていた時の訪れ。
なぜだかわからない。
とめどなく、
涙が溢れた。
探していた方向性。
そして、大切な何かが、
一滴、一滴と、
自分の中の深いところへ
受け取られていくような感覚。
生き方が
軽やかに、
楽になっていった。
あの日から、
生きるベクトルが
自然に変わりはじめた。
人の縁。
家との縁。
仕事との縁。
ひとつの縁が、
また次の縁へとつながり、
由布院から、別府へ引っ越し。
そこから自然に
新たな流れが生まれていった。
禧水・由布院わらび餅は、
全国の皆様に贈答用として
お遣いいただける和菓子となり、
金賞をいただいた。
1ミリも想像できなかった未来が、
いつの間にか
目の前に現れていた。
saiは、
どこまでも深く、自然。
風のように寄り添い、
教えではなく、
必然に計らわれるように
出逢いが起こり、
流れが廻り、
次へとつながっていく。
その奥深さと面白さに、
魅せられ続けた歳月。
家をきっかけに生まれた縁は、
渡邉夫妻のもとにもつながり、
海の広がる高台の家の離れに、
platinum vuvu salon
「グリーンフィールド」が生まれた。
16年前の一滴が、
今日という日に、
自然に流れつき、
生きることの奥深さが、
沁みてくる。
時のはからい。
それぞれの種が、
それぞれにひらいていく。
そして――
かつて画家のアトリエだった場所は、
新たな始まりの空間、
「談話室 platinum」として。
種は風に吹かれ、
自然に計らい逢い、
ある。
ひらく。
ひびく。
おどる。
そして、
次の未来へ――